介護が必要な家族を連れて逃げられるかどうか分からない夜に、家族だけで決めておけることを整理しました
避難指示が出た夜に一番迷うのは、「この人を置いていくのか、一緒に動くのか」という問いかもしれません。介護している家族がいる場合、本人を移動させるだけで人手と時間が必要になります。自分一人では運びきれないこともあり、その事実を当日に初めて知ると、判断は一段と難しくなります。
「一人で運べるか」より「誰が何分で動けるか」を見る
避難の難しさは、本人の状態だけで決まるわけではありません。階段の段数、夜間に一人になる時間帯、持病や体格による移動の制限が重なると、計画は思ったより崩れます。紙に書くときは、一人で対応できる場面と、二人以上必要な場面を分けておくと見通しがよくなります。
多い誤解は、「本人が状況を見て自分で動いてくれるはず」という前提です。認知症のある方や、言葉で意思を伝えるのが難しい方は、家族が事前に動かし方を知っておくほうが安全です。本人の意思を尊重しつつも、当日の行動は家族の準備に頼る部分が大きくなります。
名簿と個別避難計画は、登録しただけでは足りない
災害対策基本法には、災害時に自力で避難しにくい人の情報を市町村があらかじめ把握する「避難行動要支援者名簿」の仕組みがあります。消防庁の令和5年版消防白書によると、令和5年1月1日時点で、名簿はすべての市町村で作成済みとされています。
もう一つは、一人ひとりの避難方法を決めておく「個別避難計画」です。令和3年の災害対策基本法の改正で、作成は市町村の努力義務とされました。見落としやすいのは、名簿に載っていることと、計画が作られていることは別の話だという点です。登録されていても、誰が声をかけ、どの車で、どこへ運ぶかが決まっていなければ、当日の動きは家族の判断に任されます。市町村の窓口で「個別避難計画の対象になっているか」「作成の予定はあるか」を聞いておくと、話が早く進みます。
避難先は「福祉避難所」「親族宅」「施設」の三つで考える
体育館の避難所は、長く座ったままの姿勢や、トイレ・寝床までの段差で体に負担がかかりやすい場所です。そのため、自治体が指定する福祉避難所、親族宅、ショートステイ先などを候補に入れておく家庭もあります。どの候補も、受け入れの条件を事前に確かめておくのが基本です。医療的ケアが必要かどうか、持ち込める機器があるかどうかは、施設ごとに違います。
利用している介護サービスの事業所や、ケアマネジャー・相談支援専門員にも、災害時の連絡方法を聞いておくと安心です。当日つながる連絡先が一つ増えるだけで、夜間の判断がかなり変わります。
家族だけで決めておく項目
行政の仕組みは、支援の入口を作るものです。玄関を出てからの動きは、家族が決めた内容で補うことになります。紙には次の項目を書いておきます。
- 夜間や休日に、本人を動かせる人の電話番号(二人分以上)
- 玄関から車や避難先までの手順(段差、車いすの置き場所、ドアの開け方)
- 「自宅で待つ」と判断する条件(建物の安全、水や電気の状況、本人の体調)
- 持ち出す薬・介護用品の置き場所と、薬の残りの日数
持ち出しの準備は、役割ごとに分けて考える
非常持ち出し袋は、一人分をまとめて作るものだと思われがちです。介護している家族の場合は、本人の分と、移動を助ける人の分を別々に考えると、抜けが減ります。次の表は、役割ごとに何を用意すると判断が速くなるかを整理したものです。
| 役割 | 用意するもの | 買う前に確かめること |
|---|---|---|
| 連絡・呼び出し | 防災ホイッスル、連絡先カード | 暗い場所でも手の届く位置に付けられるか |
| 移動の補助 | 移乗用の介助ベルトなど | 本人と介助者の体格に合うか |
| 衛生・排泄 | 携帯トイレ、介護用パッド | 一日あたりの使用量と、必要な日数 |
| 薬・医療 | 薬ケース、お薬手帳の写し | 処方の残り日数と、薬局の連絡先 |
| 夜間の確認 | ヘッドライト、ランタン | 両手を空けて使えるか |
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よくある質問
Q. 本人を連れて避難できないとき、自宅に残ってもいいですか?
A. 自宅に留まるかどうかは、建物の安全や周囲の状況によって変わります。判断に迷う場合は、気象庁の情報と市町村の避難情報を確認し、自治体の窓口や災害時の連絡先に相談してください。事前に「自宅で待つ条件」を決めておくと、その場の判断がぶれにくくなります。
Q. 避難行動要支援者名簿に登録すれば、支援は自動で来ますか?
A. 名簿は、支援の準備のための仕組みです。登録したからといって、誰かが自宅に来ると決まっているわけではありません。個別避難計画が作られているかどうか、地域に支援してくれる人がいるかを市町村に確認しておくと、実際の動きに近づけられます。
Q. 介護サービスの事業所が休業していたら、どうすればいいですか?
A. 事業所ごとに、災害時の対応は異なります。ケアマネジャーと、サービスが止まったときの連絡方法を決めておくと、連絡がつかない場面を減らせます。決めた内容は、家族と共有しておくと安心です。
まとめ:今日からできる3つのアクション
夜間や休日に連絡がつく相手も含めて考えると、抜けが見つかりやすくなります。
名簿に登録があるかどうかも、あわせて聞いておくと話が早く進みます。
連絡先と判断の条件を一枚にまとめておくと、慌てた時にも見返せます。
この判断は、気象庁や市町村が発表する最新の情報を優先してください。この記事は一般的な整理であり、個々の家庭の状況に合う避難方法を保証するものではありません。
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参考にした情報源
- 消防庁「令和5年版 消防白書」第1章第5節(避難行動要支援者名簿の作成状況) https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r5/chapter1/section5/para2/66904.html
- 内閣府「令和5年版 防災白書」第1部第1章第2節 2-4「個別避難計画の作成」 https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r05/honbun/1b_1s_02_04.html
- 災害対策基本法(避難行動要支援者名簿・個別避難計画に関する規定)
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