最終更新日: 2026年9月27日
帰宅困難者になったら「災害時帰宅支援ステーション」を頼るとよい、と当サイトの出張中の防災の記事でも紹介しました。東京都はそこからさらに踏み込み、スマホで「いま開いている避難先」を探せる仕組みを用意しています。それが「キタコンDX」です。
実際の場面で困らないよう、帰宅困難になったときの連絡手段や集合場所は紙に書き出しておくのがおすすめです。家族の防災プラン作成ツールを使えば、必要な項目をまとめて準備できます。
帰宅困難者とは:誰が対象になるのか
「帰宅困難者」とは、大規模な地震などで交通機関が止まり、徒歩でも自力で帰宅することが困難になった人を指します。特別なことをしていた人だけの話ではなく、通勤・通学中の会社員や学生、出張・旅行で訪れていた人など、発災時にたまたま自宅から離れた場所にいた人なら誰でも当事者になり得ます。内閣府の首都直下地震対策専門調査会の報告では、自宅までの距離が10km以内なら「帰宅可能」、10〜20kmは1km長くなるごとに帰宅可能な人の割合が10%ずつ下がっていくとされ、20km以上は原則として全員が「帰宅困難」と整理されています。あくまで目安の数字ですが、「自分の職場や外出先から自宅まで何kmあるか」を一度確認しておくと、判断の基準になります。
東京都帰宅困難者対策条例:「むやみに移動しない」が基本
東京都は平成24年3月に「帰宅困難者対策条例」を制定し、平成25年4月に施行しました。条例の柱は、都民に対して「むやみに移動を開始しない」よう努めることを求めている点です。大人数が一斉に徒歩で移動すると、道路の混雑で救急車両の通行が妨げられたり、余震や火災、看板の落下といった二次被害に遭ったりするリスクが高まるためです。あわせて、事業者には従業員が施設内に留まれるよう、3日分の飲料水・食料などを備蓄する努力義務を課しています。つまり制度上も「まずはその場に留まる」ことが基本方針として位置づけられています。条例の詳しい内容と、職場に備えておきたい防災用品は、職場の防災備蓄で詳しく解説しています。
会社員の場合:まずは職場に留まる
勤務中に大きな地震が起きたら、外に飛び出すのではなく、まず職場の安全な場所で身を守り、揺れが収まってから施設の被害状況を確認します。前述の条例の考え方どおり、職場に3日分程度の備蓄があるかどうかを、平時のうちに確認しておくと安心です。備蓄が不十分な職場も少なくないため、個人のデスクにも非常食・飲料水・携帯トイレなどを少量置いておくと、会社の備蓄に頼りきらずに済みます。会社が定めている防災計画・待機ルールがあれば、それに従うのが基本です。
電車が止まったら:再開を待つか、施設に留まるか
運行情報の確認が最優先です。運転見合わせの理由(地震の規模・点検の要否)によって、再開までの時間の見通しは大きく変わります。駅や電車内に長時間留め置かれる場合もあれば、比較的早期に振替輸送が案内される場合もあります。無理にホームや車内から出て歩き出す前に、鉄道会社のアプリや駅の掲示、後述する情報収集の手段で状況を確認し、「今は動くべきときか、留まるべきときか」を判断してください。駅周辺で待機する場合は、一時滞在施設の開設状況(キタコンDXで確認できます)も選択肢に入ります。
徒歩で帰る場合の注意点
徒歩帰宅を選ぶ場合でも、思い立ってすぐに歩き出すのは避けてください。日が暮れてからの移動は視界が悪く、ブロック塀の倒壊や電線の垂れ下がりなどに気づきにくくなります。コンビニエンスストアやファミリーレストランなどが「災害時帰宅支援ステーション」として、水道水の提供やトイレの使用、道路情報の提供に協力する仕組みもあります。出張・旅行中に被災した場合の徒歩帰宅の考え方は、当サイトの出張中の防災の記事でより詳しく解説しています。歩ける靴・飲料水・モバイルバッテリーを携行し、無理のないペースで移動することが基本です。
家族との連絡方法を決めておく
発災直後は電話がつながりにくくなるため、声の通話に頼らない連絡手段をあらかじめ決めておくことが重要です。災害用伝言ダイヤル「171」やSNS・LINEのメッセージは、電話より比較的つながりやすいとされています。使い方は当サイトの災害用伝言ダイヤル171の使い方で解説しています。「最初に集まる場所」「自宅に戻れない場合の集合場所」なども、家族の防災プラン作成ツールで事前にまとめておくと、いざというときに迷わずに済みます。
災害時の情報収集の手段を複数持つ
スマートフォンのバッテリーが切れる、通信が混雑してつながりにくくなるといった事態に備え、情報収集の手段は一つに絞らないことが大切です。キタコンDXのようなLINEの仕組みに加えて、電池・手回し充電で使えるラジオも、停電・通信障害時の情報源として有効です。選び方は防災ラジオの選び方で解説しています。
帰宅困難者になったときの行動チェックリスト
- まず自分の身の安全を確保し、慌てて外に飛び出さない
- 職場・外出先に留まれるか、備蓄・待機スペースの有無を確認する
- 鉄道の運行情報を確認し、再開の見通しを把握する
- むやみに徒歩移動を開始せず、「今、動くべきか」を判断する
- キタコンDXなどで一時滞在施設の開設状況を確認する
- 171やLINEなど、電話以外の方法で家族の安否・居場所を共有する
- 徒歩帰宅する場合は、明るいうちに、休憩地点を決めながら移動する
キタコンDXとは何か:「通称」と「本名」を整理する
「キタコンDX」は通称で、正式名称は「東京都帰宅困難者対策オペレーションシステム」です。東京都が令和4年度から整備を進めてきたもので、2025年3月28日付の都の発表で運用開始が公表されました。仕組みは二つの顔を持っています。一つは自治体側の顔で、都内の混雑状況、鉄道の運行情報、SNSに上がる被害の投稿などを地図の上に重ねて可視化し、発災直後の状況把握に役立てます。もう一つが、私たち一般の利用者に見える顔、つまりLINEで使う機能です。
使い方:発災時の流れは3ステップ
手順自体は難しくありません。ただし、1と2は災害が起きる前にしかできない点に注意してください。
- 平常時:LINEで公式アカウント「帰宅困難者対策支援」を友だち追加する(東京都防災ホームページのQRコードを読み取るか、LINEの友だち検索で公式ページ記載のIDを入力)
- 発災時:トーク画面から、現在地周辺で開設されている一時滞在施設を検索する
- 施設に着いたら:LINEで入館手続き(チェックイン)をする。施設側が滞在者数を把握できるようになる
被災してから初めて存在を知る、という順番だと、そもそも検索する余裕がないかもしれません。友だち登録は数十秒で終わる作業で、費用もかかりません。
一時滞在施設は「避難所」とは別物
ここは見落とされがちなポイントです。一時滞在施設は、帰宅困難者が鉄道の復旧や安全確認を待つあいだ、一時的に身を寄せる場所として位置づけられています。地震や水害で自宅に住めなくなった人が生活する「避難所」とは、目的が違います。「近くの避難所に行けばいい」と思い込んでいると、検索の段階で行き先を取り違えかねません。キタコンDXは前者、つまり一時滞在施設の開設状況を探すためのものだと押さえておくと迷いません。
多言語対応は「観光客・在住外国人」にも安心材料
キタコンDXは日本語だけでなく、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語にも対応しています。日本語の案内だけでは状況を理解しにくい旅行者や在住の外国人にとって、母国語に近い言語で情報を得られる点は大きな安心材料です。当サイトの出張・旅行中の防災の記事とあわせて、土地勘のない場所で被災した場合の備えとして知っておく価値があります。
こんな人は、まだ買わなくてもOK
- 水の備蓄がまだできていない
- 携帯トイレの備蓄がまだできていない
- 防災リュックの中身が整っていない
- 集合住宅で保管場所を確保しづらい
こんな人は検討していい
- 在宅避難を想定している
- 停電時も冷蔵庫を維持したい
- 医療機器など電源が必要な機器がある
おすすめ製品
ここからは、備えガイド編集部が公開情報をもとに選んだ商品です。編集部が実際に購入・使用したレビューではありません。
よくある質問
東京都民でなくても使えますか?
東京都内で帰宅困難者になった場合を想定したシステムのため、都内に一時的に滞在する方(出張者・旅行者を含む)も対象になると考えられます。詳細は東京都防災ホームページで最新の案内を確認してください。
停電時やスマホの電波が悪いときも使えますか?
GPS情報や通信を利用するシステムのため、電波状況やスマホの充電状況に左右されます。モバイルバッテリーを携行し、日頃から充電を切らさない習慣も合わせて備えておきましょう。
登録方法が分かりません
東京都防災ホームページから、キタコンDXの案内ページにアクセスし、LINEの友だち登録の手順を確認してください。
まとめ:今日からできる3つのアクション
東京都内で働く・訪れる可能性がある方は、今のうちに登録しておきましょう。
システムを使うにはスマホの電源確保が前提になります。
一人だけでなく、周囲にも知っておいてもらうと安心です。
参考にした情報源
- 東京都防災ホームページ「東京都帰宅困難者対策オペレーションシステムの運用開始について」(2025年3月28日更新)
- 東京都「東京都帰宅困難者対策オペレーションシステムの運用開始について」報道発表資料(2025年3月28日)
- 東京都「東京都帰宅困難者対策条例」(平成24年3月制定・平成25年4月施行)、東京都帰宅困難者対策ハンドブック
- 内閣府 首都直下地震対策専門調査会報告(帰宅距離10km以内は帰宅可能、10〜20kmは1kmごとに10%低減、20km以上は帰宅困難とする目安について)
- 各製品のAmazon記載スペック(2026年9月時点、当サイトにて集計)
お住まいの地域によって、想定される災害や必要な備えは異なります。都道府県・市区町村別の防災情報を確認してみましょう。
地域別の防災情報を確認する →この記事について
この記事を書いた人: 備えガイド運営事務局
情報源: 気象庁・内閣府・消防庁・国土交通省・自治体などが公表している情報、および製品メーカー・販売元が公開している仕様情報をもとに作成しています。実数(公的データ・公式スペック)以外の統計・レビュー・体験談は創作していません。
商品情報について: 本ページの商品情報は、メーカー・販売元の公開情報や複数のレビューサイトの傾向をもとに、防災用途の観点から当サイトが整理したものです。編集部による実使用レビューではありません。
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