人工呼吸器や吸引器を家で使っている家庭が、停電の前に決めておくことを整理しました
在宅で人工呼吸器や吸引器、電動ベッドを使っている家庭にとって、停電は「不便」の一言では済みません。冷蔵庫の中身が心配になる前に、まず機器が何時間動くのかを知っておく必要があります。この記事では、停電が来てから慌てないために、平時に確認しておくことを順番に並べました。
停電の前に、機器ごとの稼働時間を書き出す
取扱説明書を開くか、メーカーの窓口に問い合わせて、内蔵バッテリーの持続時間を調べます。外部バッテリーを足せるかどうかも同じ場所で確認できます。内蔵と外部の時間を合わせると、家庭として必要な電源の量が見えてきます。
ただし、書かれている数字は新品で、決まった条件で測ったものです。バッテリーは年数とともに弱くなります。東京都の調査では、東日本大震災のあとに都内の人工呼吸器使用者のバッテリー保持率が低かったことが明らかになったとされています。表示の時間を信じ切らず、実際に切り替えて動く時間を計っておくと、いざというときの見通しが変わります。
愛知県が示している確認事項も、ほぼ同じ方向です。内蔵バッテリーの有無と持続時間を再確認すること、外部バッテリーを準備して事前に充電しておくこと、停電時にアラームが正しく作動するかを試しておくことが挙げられています。
どれくらいの停電を想定するか
停電の長さは、災害の規模によって大きく変わります。松戸市の資料では、発災直後は全域が停電し、半分の復旧に1日、9割の復旧に3日ほどかかるという想定が示されています。そこから「少なくとも1日、できれば3日」は電源をつなげる状態を作っておく、という考え方が導かれています。
埼玉県の手引きは、もう一段長い想定です。約1週間を自宅で過ごす場合に必要な準備として、外部バッテリーなどの非常用電源、ケアの習熟、水・食料・医薬品の備蓄、非常時の連絡体制を挙げています。どちらも自治体が置いた想定の一例なので、「この日数なら大丈夫」と決め打ちせず、少し長めに見ておくのが安全です。
電力会社の事前登録制度を確かめる
東京電力パワーグリッドは2025年4月の案内で、停電によって生命に影響するおそれがある在宅医療機器の利用者に、事前の情報登録を呼びかけています。登録すると、停電の発生状況や復旧の見通しを個別に連絡してもらえる仕組みです。
ここで誤解しやすいのは、登録すれば復旧の順番が前に来る、と思い込んでしまうことです。案内では、夜間や休日、停電が広域に及ぶ場合には連絡が遅れることがあると注意されています。登録は「情報を先に受け取るための手段」と考え、電源の準備はそれとは別に進めてください。
制度の有無や対象機器は、電力会社ごとに違います。契約先の送配電会社の公式サイトで「医療機器」「登録」を探し、見つからなければ問い合わせ窓口に直接聞くのが確実です。自治体にも支援があります。横浜市では、電源が必要な医療機器を使う方に災害時の準備を平時から確認してもらうため、災害対策ファイルの作成を勧めています。蓄電機能のある電源装置の購入費用の一部を助成する制度もあります。
電源の選び方と、やってはいけないこと
電源を選ぶときは、容量(Wh)と定格出力(W)の二つを見ます。容量は「どれだけ長くもつか」、定格出力は「どれだけの電気機器を同時につなげるか」です。機器に書かれた消費電力より定格出力が小さいと、つないだ瞬間や運転中に止まってしまうことがあります。
一方で、絶対に避けたいのが屋内での発電機の使用です。小型の発電機は排気ガスに一酸化炭素を含むため、室内・ベランダ・窓の近くでは動かさないのが基本です。停電の夜に寒さをしのごうとして、室内で発電機を動かす事故が起きることがあるので、使う場所は事前に決めておいてください。
| 電源の種類 | 向いている場面 | 買う前に確かめること |
|---|---|---|
| ポータブル電源 | 家の中で機器を数時間から数日動かす | 定格出力、容量(Wh)、充電方法と充電時間 |
| 機器対応の外部バッテリー | 人工呼吸器などの予備として使う | その機器のメーカーが対応を示しているか、接続方法 |
| 小型発電機 | 長い停電に備えて屋外で使う | 騒音、燃料の保管場所、屋外専用であること |
| モバイルバッテリー | 電力会社や主治医への連絡に使う | 容量(mAh)、出力ポートの数 |
おすすめ製品
いずれも商品名で検索した結果ページへのリンクです。型番まで特定した商品ではないため、対応機種や容量は購入前に必ず確かめてください。医療機器に電源を接続する場合は、自己判断せず主治医や訪問看護に相談するのが基本です。
多くの人がやりがちな誤解
「コンセントにつないでおけば、停電しても機器は動き続ける」と考えてしまうことがあります。ところが、停電すると機器が内蔵のバッテリーに切り替わる仕様のものでも、切り替わったかどうかを画面やアラームで確かめないと、気づくのが遅れます。東京都の資料でも、停電時に人工呼吸がバッテリーに切り替わっているかの確認が挙げられています。停電の初日に一度、実際に確かめておくのが確実です。
家族だけで決めておくこと
- 停電時に最優先で電源を入れる機器の順番
- 電源の残量が何時間分になったら、医療機関や訪問看護へ相談するか
- 夜間に一人になる時間帯に、機器を操作する人は誰か
- 主治医、訪問看護、電力会社、消防(119)の連絡先を紙で持つこと
家族で決めた内容は、家族の防災プランに書き出しておくと、年に一度の見直しがしやすくなります。
専門家・公的機関につなぐ目安
- 呼吸や体調に変化がある、機器のアラームが止まらない:迷わず119へ
- 電源の残量が不安で、復旧の見通しが立たない:主治医、医療機関、市町村の防災担当へ
- 機器の故障や設定に不安がある:メーカーのサポート窓口へ
よくある質問
Q. 停電したら、すぐに119へ電話してもいいですか?
A. 呼吸や体調の変化があるときや、機器のアラームが止まらないときは、迷わず119へ連絡してください。電源の残りが心配なだけの段階なら、まず主治医か訪問看護ステーションに相談するのが一般的です。
Q. 電力会社に登録すれば、復旧を優先してもらえますか?
A. 事前登録は、停電の発生状況や復旧の見通しを個別に連絡してもらうための仕組みとして案内されています。復旧の順番を約束するものではありません。対象や内容は、契約先の電力会社の案内で確かめてください。
Q. 機器に書かれた時間どおりなら、停電しても安心ですか?
A. 表示の時間は新品で決まった条件のときの目安です。バッテリーは年数とともに弱くなり、使い方や室温によっても変わります。年に一度は実際に切り替えて、動く時間を計って記録しておくと安心です。
まとめ:今日からできる3つのアクション
取扱説明書の数字を紙に写し、外部バッテリーを足せるかどうかも一緒に書いておくと、次の一歩が決めやすくなります。
公式サイトで見つからなければ、問い合わせ窓口に「医療機器を使っている」と伝えて確認します。
スマートフォンの電源が切れても見られるように、連絡先は紙でも持っておきましょう。
避難の判断は、必ず気象庁や自治体が出す最新の情報に従ってください。この記事は公開されている情報の整理であり、個別の医療や契約について判断を保証するものではありません。
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参考にした情報源
- 東京電力パワーグリッド「在宅医療機器をご使用のお客さまを対象とする広域停電に備えた事前登録のご案内について」(2025年4月1日) https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/for-general/pdf/20250401_information.pdf
- 厚生労働省「大規模災害時等長期停電における在宅人工呼吸療法患者等に関する支援について」 https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/000489037.pdf
- 松戸市 人工呼吸器関連の自治体資料(停電想定と稼働時間の確認方法) https://www.city.matsudo.chiba.jp/kenko_fukushi/shougaifukushi/kakushuteate/yougu-jyosei/jinkoukokyuki_hojyo.files/katuyounotebiki.pdf
- 埼玉県 在宅人工呼吸器使用者向け手引き(平時の準備編) https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/209659/heijikarasonaerutebiki20241202.pdf
- 愛知県 人工呼吸器の停電対策に関する資料 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/14847.pdf
- 横浜市「電源が必要な医療機器をご使用の方への支援」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/fukushi/kenkofukushi-joho/youdengen-kyufu.html
お住まいの地域によって、想定される災害や必要な備えは異なります。都道府県・市区町村別の防災情報を確認してみましょう。
地域別の防災情報を確認する →この記事について
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