要介護の家族がいる家で、水害時に「移動」と「トイレ」をどう考えるかを整理しました
水害のときに一番こまるのは、家族が自分で動けないことです。水が床に迫る前に、どこへ、どうやって移るかを決めておかないと、判断が遅れやすくなります。この記事は、要介護の家族がいる家庭が水害に備えるときの順番を、公的な資料と自治体の取り組みから整理したものです。
情報は本人に届くとは限らない
多くの人がやりがちな誤解は、防災無線や自治体のメールがあれば、家族の全員に情報が届くと思い込むことです。実際には、寝たきりの方や耳の聞こえにくい方には、音声が届いても内容が伝わりにくいことがあります。
長野県南木曽町の聞き取りでは、土砂災害や浸水の想定区域に住む要介護の方へ、町から直接気象情報を伝えることが難しい状況がありました。そのため、ケアマネジャーが家族へ避難情報を伝える体制がとられていたといいます。誰が情報を受け取り、誰に伝えるのかを、ケアマネジャーや訪問サービスの担当者と話し合っておくと、当日の混乱が減ります。
2階へ上がれるかは、事前に試しておく
水害の避難は、家の中で高い場所へ移る「垂直避難」が基本になることがあります。ただし、階段を一段ずつ上がれるかどうかは、体調や介助の人数で変わります。
京都市の避難計画の様式では、浸水の深さを0.5m未満から5m以上まで段階に分けて、平屋や集合住宅の1階に住む人の場合は、ケアマネジャーや相談支援専門員が避難計画に関わる形を示しています。自分の家が何mの浸水想定に入るかを、ハザードマップで先に確かめておくと、どの段階で動くかを決めやすくなります。
世田谷区では、多摩川の洪水浸水想定区域に住む避難行動要支援者へ、行動シートを配る取り組みをしています。シートには、早めに避難する目安や、介護タクシーなどの移動手段の情報も入っています。自治体の配布物があれば、家族で一緒に書き込んでおくとよいでしょう。
トイレを「1〜2日分」で考える
水害で水道が止まると、トイレは一気に深刻な問題になります。要介護の方の場合、我慢させることも、介助者の負担が増えることも避けたいところです。
逗子市の備蓄仕様では、携帯トイレの凝固剤に高分子の吸収剤を使い、抗菌・消臭の性能を求めています。セットに処理袋や保管袋が含まれているかも、確認の目安になります。座ったまま使えるかどうかは、製品の耐荷重と座面の形で判断してください。
一方で、組み立て式の簡易トイレには、耐荷重を200kgとうたう製品もあります。体格や移乗の方法に合わせて、カタログの数字を見比べると失敗が減ります。
持ち出すもの、残すものを分ける
薬や補装具、オムツ、保険証は、水に濡れない高い場所へ先にまとめておくと安心です。薬は処方の控えも一緒に持っておくと、避難先で再発行の手続きが早く進みます。
書類は、防水ケースに入れて高い棚に置くのが基本です。ただし、ケースの防水性能は製品ごとに違い、水に沈めば中まで濡れる可能性があります。避難のときは、ケースごと抱えられる重さかどうかも確かめておいてください。
要介護の家庭でそろえたい5つの備え
以下は、この記事で取り上げた備えを役割ごとに並べた表です。各製品の数字は、メーカーや自治体の公開情報をもとにした目安です。購入前に最新の仕様を確認してください。
| 備え | 役割 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 座って使える簡易トイレ | 水が止まったときのトイレ | 耐荷重、座面の形、組み立ての手間 |
| 携帯トイレ(凝固剤・処理袋) | 1〜2日分の排泄の処理 | 回数、抗菌・消臭、処理袋の有無 |
| 置くだけ型の止水板 | 玄関から水を入れない | 出入口の幅と高さ、設置に必要な人数 |
| 防水の書類ケース | 保険証や通帳を守る | 防水の表記、サイズ、持ち運びの重さ |
| ヘッドライト | 夜間の移動で両手を空ける | 明るさ、充電方式、ヘッドバンドの締めやすさ |
こんな家庭は、順番を優先する
一軒家か集合住宅か、1階か2階以上かで、必要な備えは変わります。1階に寝室があり、家族の介助が一人しかいない家では、移動の手段と止水の備えを先に決めるのが現実的です。反対に、2階以上で暮らしている家では、トイレと水の備えに力を入れるほうが効果を感じやすいでしょう。
おすすめ製品
以下は、上の表の備えに対応する製品のカテゴリです。型番まで特定できた商品ではなく、検索結果ページへのリンクになっています。サイズ、耐荷重、仕様が自分の家族に合うかを確認してから選んでください。
よくある質問
Q. 寝たきりの家族は、2階へ避難できますか?
A. 体を支えて運べるかどうかで決まります。無理な場合は、自治体の避難先の案内と、ケアマネジャーに相談して移送の手段を決めておいてください。
Q. 携帯トイレは、何回分そろえればよいですか?
A. 家族の人数と、水が止まる日数で計算します。1〜2日分を目安に考えておくと、判断しやすくなります。
Q. 止水板があれば、避難しなくてもよいですか?
A. 止水板は浸水を遅らせる備えで、避難の代わりにはなりません。判断は気象庁や自治体の情報に従ってください。
まとめ:今日からできる3つのアクション
ケアマネジャーや訪問サービスの担当者にも、連絡の役割を伝えておきましょう。
介助の人数と、途中で休める場所も合わせて確認してください。
家族の人数や、必要な薬の量を書き出して、足りないものを確かめておきましょう。
家族の状況を書き出して整理したい場合は、家族の防災プランで必要な備えを確かめられます。
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参考にした情報源
- 世田谷区「多摩川洪水浸水想定区域の避難行動要支援者向け行動シート」に関する資料
- 京都市「避難行動要支援者の避難計画」様式
- 長野県南木曽町の避難行動要支援者の支援体制に関する聞き取り内容
- 逗子市「備蓄品の仕様(携帯トイレ・凝固剤)」資料
- 内閣府 防災情報「避難行動要支援者の避難支援」(bousai.go.jp)
お住まいの地域によって、想定される災害や必要な備えは異なります。都道府県・市区町村別の防災情報を確認してみましょう。
地域別の防災情報を確認する →この記事について
この記事を書いた人: 備えガイド運営事務局
情報源: 気象庁・内閣府・消防庁・国土交通省・自治体などが公表している情報、および製品メーカー・販売元が公開している仕様情報をもとに作成しています。実数(公的データ・公式スペック)以外の統計・レビュー・体験談は創作していません。
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