東京都では2013年に「帰宅困難者対策条例」が施行され、一定規模以上の事業者に対して従業員の「一斉帰宅の抑制」と「3日分の備蓄」が努力義務とされています。しかし、実際に備蓄が整っている職場は多くありません。東日本大震災の教訓として「職場に人が残れる環境が、二次被害(混雑した道路での帰宅困難・群集事故)を防ぐ」という認識は広まっているものの、具体的な備蓄量や行動計画の整備は後回しにされがちです。この記事では、事業者・総務担当者が整えるべき最低限の対策を解説します。
①3日分の従業員備蓄(水・食料・携帯トイレ)→②一時待機スペースの確保→③行動計画(BCP)の策定→④従業員への周知・訓練→⑤安否確認手段の整備。①②から始め、③④⑤を段階的に整備することが現実的なアプローチです。
帰宅困難者対策条例とは何か
東京都「帰宅困難者対策条例」(2013年施行)では、事業者に以下を求めています。
- 従業員の一斉帰宅の抑制: 大規模地震発生後3日間は、従業員を職場内に留めるよう努める
- 3日分の備蓄の確保: 従業員1人あたり3日分の水・食料・携帯トイレ等の備蓄(努力義務)
- 行動計画の策定と訓練: 災害時の従業員の行動を定めた計画を作成し、定期的に訓練する
法律上の強制力は限定的ですが、従業員の安全を守る観点と、帰宅困難者の大量発生による社会的な混乱を防ぐ目的から、規模にかかわらず対策を整えることが推奨されています。
事業者として最低限やるべきこと
全てを一度に整えようとすると動けなくなります。以下の優先順位で着手してください。
- 水と食料の備蓄から始める: 最低限、従業員人数×3日分の水・食料を確保する(後述の計算式を参照)
- 携帯トイレを準備する: 断水を前提に、1人1日3〜5回使用できる数量を確保する
- 安否確認の手段を定める: メール・SNS・安否確認サービスのいずれかで、全従業員への一斉連絡手段を確認する
- 行動計画を1枚にまとめる: 「地震発生時にどのフロアに誰が残るか」「いつ帰宅を許可するか」の基準を決める
従業員1人あたりの備蓄量算出
| 品目 | 1人1日の量 | 3日分の量 |
|---|---|---|
| 水 | 2L(飲料・調理) | 6L(500mLペットボトル12本分) |
| 食料(カロリーベース) | 1,600〜2,000kcal | カロリーメイト1箱・レトルト2〜3食分目安 |
| 携帯トイレ | 3〜5回使用分 | 9〜15回分(10回セット×1〜2個) |
| 防寒・生活消耗品 | アルミブランケット1枚 | 1人1枚 |
※上記は独自調査によるまとめです。従業員の体格・業務内容によって必要量は異なります。
職場備蓄の参考となる商品については → 缶詰・保存食の選び方や 乾電池の備蓄管理をご覧ください。
👨👩👧 個人・家庭での備蓄管理を記録する
職場の備蓄と並行して、自宅の備蓄状況も家族で共有しておきましょう。 → 家族の防災プランを作る
一時待機スペースの確保と整備
従業員が一時的に待機するスペースを確保する際の考え方です。
- 会議室・エントランスの転用: 通常の会議室・休憩室を一時的に待機スペースとして使用できるようにする
- 倒壊リスクの低いスペースを選ぶ: 書棚・ガラス製品が多い場所より、開けた場所が安全。ブロック塀・コーナー窓の近くは避ける
- 毛布・アルミブランケットを備える: 冬季の待機に備えて保温具を準備しておく
行動計画の作り方と従業員への周知
行動計画は「震度◯以上が発生した場合に、何を、誰が、どの順番で行うか」を1枚で書いたシンプルなものが最も使われます。以下の項目を含めてください。
- 発災直後の安否確認方法(連絡先・ツール)
- 建物の安全確認を担当する人と手順
- 帰宅を許可する判断基準(例: 「発災から24時間後、余震が落ち着いた時点」)
- 帰宅困難者向け一時待機スペースの場所
- 備蓄品の保管場所と配布担当者
従業員の帰宅困難時の行動判断については → 大地震で帰るか・泊まるかの判断フローも合わせて共有してください。
よくある質問
帰宅困難者対策条例は何人以上の事業者が対象ですか?
東京都の条例では「一定規模以上の事業者」に努力義務が課されますが、従業員数の具体的な下限は設定されていません。実質的には数十人以上の事業者を対象とした内容となっています。ただし中小規模の事業者でも「従業員の安全を守る義務」は変わらないため、規模に関わらず最低限の備蓄は推奨されます。
備蓄品の購入費用は損金(経費)に算入できますか?
防災備蓄品の購入は一般的に経費(消耗品費・防災費)として処理できます。具体的な税務上の取り扱いは顧問税理士や税務署に確認してください。
テレワーク中心の会社でも職場備蓄は必要ですか?
テレワーク中の従業員は自宅で被災するため、職場の備蓄ではなく「各自の自宅備蓄の確保」を会社として推奨することが有効です。出社している従業員向けに最低限の備蓄を職場に置くことは引き続き意味があります。
安否確認システムを導入していない場合、どうすればよいですか?
専用の安否確認システムがない場合でも、LINEグループ・Slack・メールでの一斉連絡フローを事前に定めておくことで対応できます。重要なのは「発災後◯分以内に◯◯に連絡する」という手順を全員が知っていることです。定期的に試験的に運用することで実効性が高まります。
まとめ: 今日からできる3つのアクション
※ 本記事はAmazonアソシエイトのリンクを含みません。職場備蓄商品については → 缶詰・保存食の選び方等の関連記事をご覧ください。
参考にした情報源: 東京都「帰宅困難者対策条例・事業者向けガイドライン」、内閣府「企業の事業継続計画(BCP)策定ガイド」、東京都総務局「帰宅困難者対策の取組状況」
お住まいの地域によって、想定される災害や必要な備えは異なります。都道府県・市区町村別の防災情報を確認してみましょう。
地域別の防災情報を確認する →この記事について
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